ドヤジのメモ帳

ドヤジのメモ帳

Dungeon Crawl


 石ころがゴブリンの脳天にめりこみ、ゴブリンは動かなくなった。
 そのすぐ横、まさに目の前で、肩で息をしている血まみれのホビットが、スリングと呼ばれる投石器に
 次の石をセットし撃とうとしたところだったが、目前の敵が動かなくなったのを見て、その動きを止め膝をつく。


投石器は本来は離れた相手に向けて使う物である、しかし、彼は相手との距離に関わらず投石器を武器として使った。敵がまさに目の前で棍棒を振りかざしている時でさえ…である。彼は接近戦用に使うためのダガーを持っていたが、持ち替えずにスリングから石を目前の敵に当てる。たしかにダガーでは真正面からの戦いに用いるには貧弱すぎたし、彼はスリングを扱うことに関しては天性の才能があった。
スリングから放たれる石は相当な速度を持って発射されるため単なる石とはいえ案外バカにならない威力があるものの、だが、こんな武器で人間大の大きさの怪物に対処できるのか?


しかし、そんな疑念はこの「今をどうやって生きるか?」という切実な問題によってかき消されてしまう。彼に毒牙を向けた蛇が迫っているのだ。


【淵でもがく小さきものよ……】*1
<第1話:ホビットスリンガーのダンジョンサバイバル。どこまで生き延びることが出来るのだろう?>