ドヤジのメモ帳

ドヤジのメモ帳

Dungeon Crawl   


 さっきからずっと、どこかで物を食べるような音が聞こえる。不吉な物音だ。
 物音のする場所はわからないが、早めにその音の正体と場所を突き止めなければいけない気がする。
 そこに、ぶよぶよとした生き物、ジェリーが現れた。ジェリーの足元には
 先ほど倒したオークの武具が散乱している。
 あの物を食べるような音がまたした。ふとみると、ジェリーは足元のオークの武具を食べている。
 急がねば……生命力を奪う負のエネルギーの矢がジェリーめがけて放たれた。


ジェリー、それはあらゆる物体を溶かす。
奴の体当たりは鎧を溶かし、
奴への攻撃は武器を溶かす。
奴には毒は効かない。
奴に放たれた飛び道具の弾はおそらくは飛び道具を放った者が回収される前に奴が食べてしまう。
奴は十分に物を食べると2つに分裂する。


今のホビットが持つ、ジェリーに対して安全な攻撃方法はさっき拾ったこのワンド、『掠奪のワンド』しかない。
しかし、そのワンドは彼の持つ攻撃手段の中で最も強力な攻撃手段。切り札。できるかぎり温存したい代物。
彼はため息をつきながら掠奪のワンドをジェリーめがけて振りかざした。


ジェリーは小さく縮こまり消滅寸前になった。そこへスリングによる投石の追い撃ちでジェリーは消滅。


が、その束の間、またジェリーが前から現れる。ジェリーは、すでにあたりに散乱していたアイテムを食べて分裂していたようだ。


今の彼が持つジェリーに対しての安全な攻撃方法は、切り札、『掠奪のワンド』しかない。


最も、そいつは切り札が効く敵であるぶん、まだなんとでもなる敵であったということを、彼は後に思い知ることになる。


【淵でもがく小さきものよ……】
<第6話:掠奪にはより鋭い掠奪を-続->