ドヤジのメモ帳

ドヤジのメモ帳

Dungeon Crawl   


どこまでも続くような迷宮、終わりなきような道、をさまよう彼がいた。
どこかで通ったような道ばかりが続き、同じところを延々と回っている感覚に捕らわれる。
…彼のほかには誰もいない…



じめじめと不快な沼を探索していた時、妙な入り口があったのだ。
それはラビリンスの入り口。数多くのお宝が眠っているというが、入った者は死ぬまで出られないという。


忍び寄る飢え。出られない恐怖。閉塞。
ここでは、あまりに同じような道が続くために、地図を覚えていることが出来ない。


だが、足元に石を置いてマークをつけることはできる。
そして、この迷宮には、そのマークした石をこっそり回収する何かはいなかったのだ。
分かれ道の先が行き止まりだった時、どこから来たのかを忘れることはない。
だから、理論上必ずその迷宮からは抜け出すことが出来るのだ。


だが、その迷宮には彼のほかに住人がいたのだ。迷宮から誰も出さないようにするためにする住人が。
彼がそのようにして先を進んでいくと、大きなミノタウロスが咆哮して襲い掛かってきた。


たじろぐ彼、だが、相手は肉体派の一匹のみ、技巧派の彼の敵ではない。
赤い手で混乱させ、その間に、剣で、突く、切る。


倒した先に見えるのは、階段。どうやらあのミノタウロスは出口を守っていたのだ。
そしてそこには数々のお宝も見える。
最も、お宝のほとんどは迷宮でさまよい死んだ冒険者のものらしく、今の彼にとってそこまで素晴らしい物はなかったが。


階段を上ると、じめじめとした沼が広がっている。
いったん帰ろう。ベースキャンプに戻って荷物の整理をしよう。


【淵でもがく小さきものよ……】
<第21話:迷宮ラビリンス>



 *
  沼には同じようなラビリンスがもう一つあったのである。
  そして、そこでも大きなミノタウロスが出口を守っていた。
  だが、ひっそりと走る彼がやってくるのに気がつかない。
  そしてそのまま、そのミノタウロスは急所を刺され、あっさりと殺されてしまった。
 <第21話おまけ>