ドヤジのメモ帳

ドヤジのメモ帳

Dungeon Crawl   


『沼』、じめじめと陰鬱な空気と陰鬱な水気が混ざる。足元に広がるじめじめとした水溜りが、訪れる者の進攻を妨げ士気を挫く。


彼は、できるだけ水のないところを歩き、どうしても水に入らなければならないときは、なるべく浮遊してしかもできるだけ浅いところを渡るようにした。
水溜まりは浅いところならば動きにくいだけで苦労すれば渡れるが、深いところはうっかり入ったらたちどころに溺れてしまうだろう。
彼は泳ぎがあまりうまくはないし、生き残るためのいろいろな荷物を背負っている。何も持たずに泳ぐのとはわけが違うのだ。


そんな不快な環境のなか、彼に沼の不快な住人が襲い掛かる。蝿、蚊。
高速で飛び掛る蝿をそれを上回る高速で叩き落し、刺してくる蚊をその前に剣で刺し殺す。


ほっとしたのもつかの間、そこへ妙な霧が彼のほうへ広がる。その霧は希薄ながらも悪意を持つ。ここでは霧までもが敵なのだ。
その希薄な霧が彼に襲いかかる。応戦するも、霧は実体を持たないため攻撃が当たりにくく、生命体ではないため、全ての属性攻撃が効かない。
そしてふらふらと、蝿のように舞い、蚊のように刺してくる。
ここでは、ツキマーの舞踊の魔術によって、踊る武器をけしかける際、その武器の魔法が切れて落ちた時、そこが深い水のところだと武器を回収できなくなってしまう。という問題があるので、一応いくつか予備の武器を持ち歩いてはいるものの、安易に踊る武器に頼ると、武器がなくなってしまう恐れがあるのだ。


彼はこの不快な希薄な霧に、沼に滞在する間、なんども煩わされることになる。


良い事もあった。短剣使いの憧れの武器。「クイックブレード」を拾ったことである。滅多に見かけない貴重な魔術の武器であり、威力はそれほどではないものの高速で敵を刺す事ができる。


もっとも、彼は、超命中値のクイックブレードを既にオカワル様から受け取っていたのだが。


【淵でもがく小さきものよ……】
<第20話:蝿のように舞い蚊のように刺す> 20回分生存を記念してダンプ