ドヤジのメモ帳

ドヤジのメモ帳

Dungeon Crawl   


地下墓地。宝物庫の中になぜか築かれている広大な墓地である。
宝物庫への侵入者を放り込んでいるのか。宝物庫への侵入者との戦いで犠牲になった者を放り込んでいるのかはわからないが、まともな管理がなされておらず、そのせいで中ではそこに放り込まれた死体がアンデットとなってさまようことが多く、結果、アンデットの巣窟となっている。


肉が腐りぼろぼろのゾンビ。肉が完全に腐って落ちて骨だけになったスケルトン。
元が、どんな生き物だったのかはわかる。
元は、強大で偉大な生物であった場合も多く、そういう生き物だったアンデットのほうがここではなぜか目立つ。
強大な生物であった者ほど生への執着が強くてアンデットになりやすいのかもしれない。
もっとも、それらは例外なく生き物を見ると同属にするべく襲い掛かる、そして元の生き物が強ければ強いほどそのアンデットも強い。それらと戦うほうにとっては迷惑で大変な話である。


れいのホビット、彼が、それらのアンデットを短剣を振り回し蹴散らしながら進むと、ふと変わったものが見える。
溶岩のバリケード。その中にいくつかのアイテム。その中に何の変哲もない銀の像。
何の変哲もない…その感覚は即座に間違いであったことを知る。
何の変哲もない銀の像が光ると、突如目の前に悪魔が呼び出される。


あの銀の像は、それに近づいた者に対して敵対的な悪魔を呼び出す。悪魔の像。像がひそかにほくそ笑んだように見えた。
だが、あの悪魔の像を壊す方法はあるのだ。


彼が分解のワンドを振る、と銀の像は金切り声をあげて崩れ去った。
でももし、そのワンドを持っていなかったら、彼は銀の像のほくそ笑みを許すに任せるしかなかっただろうが。


銀の像の他に障害は、彼にとってはもうない。溶岩のバリケードは、履いていた浮遊の靴を発動させて浮かび、悠々と乗り越える。着地。
中のアイテムを悠々と持ち去った。


【淵でもがく小さきものよ……】

<第29話:地下墓地でほくそ笑む銀の像>