ドヤジのメモ帳

ドヤジのメモ帳

Dungeon Crawl   


 ぴゅんぴゅんと矢が飛んでくる。そのいくつかはホビットの後ろに飛んでいき、
 その残りはそのホビットの小さな体に突き刺さる。
 吹き矢の音。さらに、そのホビットはまるで何かに祈っているような奇妙な動きをする。
 
 
 矢を撃ってきたのセントール。強敵だ。しかし強敵とはいえども、彼には毒吹き矢がある。思い切って彼が
 接近すると、セントールは射撃をやめて蹴りで攻撃してきた。すかさず毒吹き矢を撃ちこみ、毒が回る間、
 セントールの蹴りを耐え切りつつ短剣を振り回す彼。


 ついに、どさりとした音。
 また彼は祈るような動作を再びしながら、さきほど倒した死体を切り刻む。


 すると、その死体が炎につつまれ消え去る。
 それは、その死体が軍神『オカワル』に捧げられたことを示す炎。
 彼が軍神『オカワル』の信徒になっていたことを示す炎。


……彼は、さまざまな神様が祭られているという『諸宗派の寺院』への入り口を見つけたのだ。


その寺院はだだっ広い大広間に祭壇が点在している極めて質素なものだった。
ただ、敵意が感じられるものがない。かすかな安心。
彼は残りのまだ鑑定していない巻物と薬を全て使用鑑定する。


そして……生き残るために。神様の加護を得る。彼はさまざまな神の祭壇のなかから、軍神『オカワル』様の祭壇に赴いて入信する。


この神様は、たくさんの敵を葬ることと、たくさんの死体を捧げること、おまけに高価なアイテムを祭壇で捧げることにより、戦いのための有用な力と、もしとくに気に入られれば戦いのための強力な武具を授けてくれるらしい。


その神様『オカワル』様との出会いは彼にとって必然のものだったのだろう。


彼が生き残るための戦いは、軍神の信徒になるならないに関わらず、しばらくは終わらないのだから。


【淵でもがく小さきものよ……】
<第4話:さらに戦わさせられる者>