ドヤジのメモ帳

ドヤジのメモ帳

Dungeon Crawl   


その抗争はずっと長くから続いていた。
いや、正確には抗争とは呼ばないのかもしれないが…


巨大な蜂の巣を作り、ロイヤルゼリーを多量に蓄え、その地域のほぼ全部を支配する殺人蜂の集団。
その隅っこ、大きな深い池を隔てたところで、こっそりといくつかの財宝を蓄えながら、虎視眈々とその巨大な蜂の巣を奪おうと狙う黄色蜂。
その黄色蜂の巣は、大きな池に隔てられ隠れた所に存在するため、その黄色蜂がいるということに、気づく蜂はいなかった。


だが、黄色蜂は強さこそは、針に麻痺毒を含み、並みの殺人蜂よりも上だが、数で大きく劣るためになかなか攻勢に出られない。そのために長いこと、この膠着状態が続いていた。


だが、その膠着状態がついに破られる時がきた。


人間よりも一回り小さいが十分に巨大で無慈悲な彼の襲撃である。
彼は、全ての蜂、幼虫から女王蜂まで全て、皆殺しにしたうえ、蓄えていたロイヤルゼリーなども全て略奪したのである。
深い池に隔てられたその黄色蜂もその襲撃を免れられなかった。
深い池の奥に巧妙に隠されていた巣だったが、その存在をなんらかの形で彼に知られてしまっていたのだ。
そして、池を魔法で浮遊してやってきた彼によって襲撃され、同様に皆殺しの憂き目にあったのである。


かくして、この小さな抗争は、それより一回り大きなものの気まぐれによって、このような形で、終焉をむかえたのであった。


【淵でもがく小さきものよ……】
<第23話:蜂の巣、黄色蜂との膠着を破る者>