ドヤジのメモ帳

ドヤジのメモ帳

Dungeon Crawl   


彼が★『ゾットのオーブ』を手にした瞬間のことだった。
彼の前に「青の殲滅者」が姿を現す。奴は稲妻を彼めがけて放つ。かわす彼。


ダンジョンの奥深く、20F以降に、それらの入り口が堂々と大口を開けて開いていた。
ひとつは、彼が入り口の門番を倒して笛だけを奪って帰ってきた場所。
その奥には、生ける者をなんとしてでも亡き者にするべく悪意を帯びた恐ろしい空間が待ち受けていたが、彼は幸い知らない。
他にも同じようなものがあり、ひとつは、数々の名のある大悪魔が支配する多重地獄のパンデモニウムへの門。
もうひとつは、忌まわしきものの巣くう無間地獄のアビスへの門。
どちらも、入ったら、出られない。一方通行。


そんな恐ろしい世界への一方通行の入り口があるかわりに、このダンジョン内には、
悪魔も忌まわしきものも、何者かに呼ばれない限り決して現れることはない。
ある種の均衡が保たれていた。


★『ゾットのオーブ』がその場所から動いたこと。彼の手に渡ったこと。によって、そのダンジョンの均衡が崩れだす。
このダンジョン内に、パンデモニウムやアビスや地獄の住人である「奴ら」が出入りするようになったのだ。


彼のなすべきことはひとつ、この『オーブ』をかかえて、階段を上り上り、このダンジョンから脱出することだ。
テレポートで階段を目指す彼。だが、思うような場所に飛ばない。
その間にも、別の殲滅者が彼を殲滅するべく現れたうえに、青き殲滅者は彼に地獄の苦悩を浴びせる。
力なく苦悩を浴びる彼。生ける者がその苦悩に抵抗することは不可能なのだ。
その刹那テレポートが彼をオーブの護られていた遺跡の外、登り階段の近くに飛ばす。


走る彼。俊足の魔法を唱え、飛翔の魔法を唱え、すっとぶように走る。
ゾットの領域から抜け出した。その間にも、彼の前には殲滅者や忌まわしきものやヘルウイングなどの地獄の住人が立ちはだかったが、ひたすら走って奴らを煙に巻いた。


ダンジョン22F、閉じられたアーチが見える。奇妙なアーチである。
彼の記憶を思い返してみると、その場所は前にはそのパンデモニウムへの入り口だった。
なぜ閉じられているのか、それも『オーブ』の力なのだろう。
そこへ、炎に包まれた「魔人」が目の前に現れた。
閉じられている理由はともかく、彼にとってすでにここは地獄の一部と化しつつある。
ともかく、彼は即座に俊足で走り抜け、階段を駆け上がり奴を振り切る。


階段を駆け上がると、彼のメインベースキャンプのひとつであった制圧済み蜂の巣の入り口が見えた…


【淵でもがく小さきものよ……】

<第47話:オーブをこの手に、地獄からの追っ手>